働きながら年金を受け取る際や、退職後に雇用保険・健康保険の給付を受ける際、「どちらかが止まってしまうのでは?」と不安になる方は多いものです。 今回は、複雑に絡み合う「年金と各給付の調整ルール」を分かりやすく解説します。
1.在職老齢年金と「高年齢雇用継続給付」の調整
60歳以降も働きながら老齢厚生年金を受ける際、給与と年金の合計額が50万円(令和6年度支給停止基準額)を超えると年金の一部または全額がカットされます。
さらに、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」を受ける場合は注意が必要です。
■在職老齢年金受給中は以下のように支給停止がかかります(令和6年度)
給与+老齢厚生年金の額※
|
老齢厚生年金
(在職中に受ける年金)
|
高年齢雇用継続給付金を受給したとき
|
50万円未満
|
全額支給
|
高年齢雇用継続給付は最大で15%(※10%)
受けれます。年金から給与の最大6%(※4%)
が減額されます。※令和7年4月改正
|
50万円超
|
一部または全額支給停止
|
同上
|
※正式には 「給与」→総報酬月額相当額 「老齢厚生年金」→年金基本月額 です
2. 「傷病手当金」と年金の調整
病気や怪我で働けなくなった際の「傷病手当金」は、受給のタイミングでルールが変わります。
受給時期 |
傷病手当金 |
在職中 |
調整せず全額受給可能 |
退職後
|
「資格喪失後の傷病手当金」は受給不可(老齢厚生年金が少なければ差額支給)
|
※同一傷病の障害厚生年金と傷病手当金は、調整が入ります
3.「失業給付(基本手当)」と年金の調整
ハローワークで求職の申し込みをすると、65歳未満の老齢厚生年金は全額支給停止となります。年金は月単位で止まりますが、失業給付を全日数分使い切らなかった場合は、後で年金が解除(精算)されます。
支給停止解除月数 = 停止された月数 -(失業給付の支給対象となった日数 ÷ 30日※)※1未満の端数は切り上げ
尚、障害年金と基本手当は停止調整ありません
4.「年金の方が高い」のに求職申し込みをしてしまったら?
失業給付金と比較して年金の方が有利な場合は、あえて失業給付金を受けないという選択肢もあります。
⚠️万が一、年金額の方が多いのに間違えて求職の申し込みをした場合
基本手当の受給状況 |
対応及び影響 |
未受給
|
ハローワークに取消調整依頼可能
|
1日でも受給済 |
基本手当30日分までの受給で申請すれば年金1ケ月停止で済みます。 但し、31日分以上受給しますと年金2ケ月以上停止になります |
5.支給調整のまとめ
併給する年金 |
健康保険の傷病手当金 |
労災保険の障害(補償)等年金 遺族(補償)等年金 |
雇用保険の基本手当
|
老齢厚生年金
|
※退職後のみ調整あり
|
調整なし
|
調整あり
|
老齢基礎年金
|
調整なし
|
調整なし
|
調整なし
|
障害厚生年金
|
※調整あり (別傷病除く)
|
労災側を調整
|
調整なし
|
障害基礎年金
|
調整なし
|
労災側を調整
|
調整なし
|
※傷病手当金の調整: 退職後、または障害厚生年金と同一傷病の場合。「年金額÷360」が傷病手当金の支給日額より多い場合、傷病手当金は支給されません。
65歳未満の年金には「一人一年金」の原則があり、老齢・障害・遺族のいずれかを選択することになります。しかし、雇用保険の基本手当については、障害年金であれば調整されずに両方受け取れるといったルールも存在します。
退職時の選択一つで、受給総額が数十万円単位で変わることもあります。 「自分にとって最適な受給パターン」を知りたい方は、ぜひ個別の年金相談をご利用ください。